「月の大地を走破せよ!人類初 月面車開発秘話」です。
1.甦った月探査の夢
フォン・ブラウンはアポロ計画のリーダー。宇宙開発の詳細な絵を描いていた。そんな化に月面車もあった。月面車は西部を幌馬車で切り開いた、アメリカらしい発想のためにも必要だった。
1957年10月ソ連世界初の人工衛星打ち上げ。米ソの宇宙開発競争。1985年1月アメリカ初の人工衛星打ち上げ。1961年アポロ計画スタート。1962年月面車開発スタート。ロケットエンジンの開発と同時に、車も開発された。
1964年に作られた移動月面研究車(MOLAB)大きなタイヤ、全長9m重量3トン、2人が2週間暮らして研究も出来る。ハンドルとブレーキは自動車と同じ。フェレンスとサミュエルが開発~月の重力や環境に耐える能力が必要。しかし行けなかった。理由は差屋台が巨体過ぎた。1966年に開発中止になった。しかしチャンスを待っていた。
1969年3月、二人は月着陸船を見る。無駄なスペースはない。だが1ヵ所発見!縦横1.5m、奥行き0.9mのスペース。一見、無理なようだが、パブリックは諦めずに挑戦。2人乗るには最低3mは必要。岩を乗り越える大きなタイヤ…3ヵ月考えつづけた。
アイディアは突然、思い浮かぶ。イスを折りたたむ。車体の前後は蝶番で折りたたむ。4つのタイヤを45度傾ける。着陸船のスペースに収まるよう、自動車を折りたたむ。
NASAへ6分の1のモデルを見せる。上手くいくと喜ぶ。フォン・ブラウンにも見せる。折りたたんで構想を話す。作るべきだ!と机を叩いて決定。一度は消えた月面車開発の火を灯した。
2.月の大地を走破せよ!
1969年7月16日アポロ11号打ち上げ。3ヵ月後、サヴェリオ・モレオが応援に来る。普通、自動車は開発に4年をかけるが、月探査は1年半しかかけられなかった。1971年7月のアポロ15号に間に合わせる必要があった。
まず月の大地を走破するための性能。高さ30cmの障害物を乗り越える。さらに銀亜鉛電池で4つのタイヤのモーターを動かす電気自動車。月の重力は6分の1なので、4つで1馬力で充分と考えられた。コントローラーはハンドル・アクセルを兼ね備える。T字型に改良して、宇宙服でも操作しやすくした。前に倒せば全身、左右に倒せば旋回、後ろに倒すとブレーキ、ボタンを押すとバックする。
走りは上々~開発は順調に進むと思われた。ところが重力が6分の1で、乗り込めるのか?地球上では簡単に乗り込めるが、重力の小さい月ではわからなかった。飛行機の落下の無重力状態で検証。身体が浮いて座れない。人間が乗れなくては意味がない。車体の側面に15cmの金属棒を付ける。棒に足を引っ掛けて浮くのを防ぐ…乗り込めた。
月面車は車輪の付いた宇宙船~タイヤの材質と形状が問題。巨大なゴムタイヤは真空中に置くと割れてしまい、役に立たない。しかも月面の温度差は270℃。凸凹の激しい地形、きめの細かい砂…どんな地面にも対応出来なければならない。
金属しかない…金属のタイヤでも人が乗るには、しなやかさが必要。バネ材を使った金属製タイヤを作った。細い金属線を4mm間隔で編んだ、ワイヤーメッシュタイヤが選ばれた。ゴムタイヤを超える性能。押すと戻り、決してパンクしない。ワイヤーメッシュタイヤの実力とは?試験用の探査車を作って障害物を走らせる。軽々と乗り越える。障害物を乗り越える時、形に合わせて変形する。クレーンで吊って車体の重さを6分の1にしてテストした。
1971年3月、月面車納品~月探査船に積み込まれた。アポロ11号、12号、14号までは月面の黒い所…海と呼ばれる平坦な場所に着陸。玄武岩と呼ばれる地球にもある石ばかり。15号は高地の白い場所にアプローチ。海の縁に着陸し、高地に向かう。
1971年7月26日、アポロ15号打ち上げ~7月30日月面着陸。飛行士が紐を引く!車輪が飛び出し、月面車はワンタッチで展開した。5分後、姿を現す。しかしアクシデント!前輪のステアリングが効かない…なんてこった!直せるのか?大ピンチ…しかし、ある機能がピンチを救う。4輪操舵システムのため、後輪だけでも旋回出来た。月面車は滑るように走り出す。
ふと気付くと、着陸船を見失ってしまった。月は地球より小さいため、3kmも走ると地平線で見えなくなる。だが月面カーナビシステムで迷子にならない。2日目、クレーターの縁で光り輝く物を発見!ジェネシスロック(創世記の石)と呼ばれる白い石~月の誕生時にできた石。
今までの黒い玄武岩。15号が発見した白い石は斜長岩~この意志で月の誕生のシナリオが描ける。46億年前、できたばかりの太陽系~誕生直後の地球に火星ほどの天体が衝突。ジャイアントインパクトで破片がばら撒かれる。破片はお互いの引力で引き合い、衝突を繰り返す…その結果、月が出来た。
出来た月はマグマで煮えたぎっていた。やがて冷えて、比重の軽い、白い斜長岩が浮き上がる。最初、月は白かったと考えられる。その後、無数の隕石が月に衝突…クレーターから溶岩が噴き出て埋める。冷えた黒い岩が玄武岩。
1972年4月16日、アポロ16号打ち上げ~月面車が大活躍。月を駆け巡る。27㎞走破は、歩いていた頃の10倍。アポロ計画には必要だった。
3.大発見へのラストフライト
アメリカは泥沼のベトナム戦争に突入~月どころでなくなる。アポロ20号までの計画が17号で終わりになる。アポロ17号に最後の重要なミッションが与えられる。険しい山脈の渓谷に未知の石を探す。NASAは初めて科学者を乗せる。それまでは全員、パイロットだった。29歳の地質学者にチャンスが来た。自動車しか運転した事がないシュミットさんに操縦を叩き込む。新たな石を発見する最後のチャンス。
1972年12月7日、アポロ17号打ち上げ~渓谷の中央に着陸。グランドキャニオンより深く、複雑な地形。直径100mを超えるクレーターを発見…オレンジ色の砂がある!火山の跡だ!今まで月が火山活動をしていた証拠は無かった。砂を詳しく調べると、オレンジグラスと呼ばれる0.1mmほどのガラス粒。
4.40年後の大発見
アポロ計画が終わって40年~今も月の石が研究されている。最新の分析機器で調べる。オレンジグラスになった時、内部の物質も閉じ込められた。フッ素や塩素など、地球と同じ元素が含まれていた。さらに水も含まれていた。地球のジャイアントインパクトで4000℃の高温で水は全て蒸発したと考えられた。月の水はどこから来たのか?
月の石の水を調べる~重水素を調べると、割合は天体ごとに違う。0.02~0.03%が含まれてていた。彗星と同じ…月の水は彗星から来た。氷で出来た彗星が月に降り注いだ。月は再び、水を獲得していた。分析技術の向上が次々と発見をしていく。
アポロ計画終了後、月へ降りた人間はいない。だが研究は続く。月探査機LORは月を調査している。撮影された画像に17号の着陸地点が写る~細い筋は月面車の通った轍が残っている。月面車も写っている。月探査の主人公は、新たな人類の月探査の時を待っている。